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「8 1/2」(1963) [映画の観方]

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<監督>フェデリコ・フェリーニ
<出演>マルチェロ・マストロヤンニ、アヌーク・エーメ
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■まずタイトルがいいです。8でもなく、9でもなく8 1/2というところがお洒落。ただこれを日本語で発音してしまうと「ハチトニブンノイチ」でしょ。「ハチト」の「ト」がなんだか間抜けですよね。あるいは「ハッカニブンノイチ」と読むのかな?…どっちにしろ間抜け。あと「1/2」はやっぱり小さく書きたいところですが、パソコンだと通常「8」と同じ大きさで表記されてしまう。これだと「2分の81」にも見えるし、分かりづらい。8と1の間を半角を空けることによって暗黙の了解として、「8と2分の1」と読んでるけど、あまりスマートじゃない。その辺が残念と言えば残念。ちなみに"8 1/2"という数字はフェリーニがそれまでに撮った映画の数(長編8本+短編1本)を表しているそうですが、ちゃんと内容にもかかっているんですね。

■内容は、フェリーニ自身の投影ともとれる映画監督のグイドが、映画製作に行き詰まり、保養地に温泉治療に出かけるんですが、売り込みに必死な女優や、進行状況を気にする製作者、記者などに追い回され、治療に専念できない。さらに妻を呼び寄せるも浮気がばれて険悪になり、映画製作は一向に進まない。そんなグイドの苦悩を現実と虚構(夢、妄想、幼少期の記憶、劇中劇)を織りまぜながら描いていくというものです。

特に妄想のシーンは秀逸で、特殊効果や特撮などで、シュールな世界をうまく映像化してます。

たとえば冒頭、渋滞の車から抜け出し、空を昇るグイド。しかし彼の足にはヒモが括りつけられていて、地上へ引っ張り下ろされる。このシーンは遅々として進まない映画製作から逃れようとするが、結局逃れられないというストーリーを象徴するシーンで、導入部としては見事な導入部です。

また、彼とこれまでに関わった女性たちが仲良く共存するハーレムの妄想シーンは華やかさと力強さに溢れていて、この映画のハイライトの一つでしょう。音楽の使い方もうまいです。

そしてラスト、「人生は祭りだ、ともに生きよう」というグイドの"答え"を象徴するラストのダンスシーンは圧巻で、映画的な着地を見事に決めてくれます。こうした映画のカタルシス作用としての"祭り"は他のフェリーニ作品(「カリビアの夜」「オーケストラ・リハーサル」など)にもしばしば見られます。

■ゴッホの「ひまわり」、ピカソの「ゲルニカ」、岡本太郎の「太陽の塔」など有無を言わせぬ圧倒的な力を持った作品というのがあります。「8 1/2」もまさにそんな作品のひとつだと思います。

一見、難解な映画に思われがちですが、僕は決してそうではないと思うんですね。かといって「道」のような分かりやすいストーリーがあるわけではないけど。

デヴィッド・リンチをはじめ、多くの映画監督に人気があるのは、映画監督そのものを題材としていることもあるんでしょうが、やはり単純に"センスがいい"というのが一番の理由だと思います。

脚本、構成、色彩感覚、構図、カメラワーク、音楽、演技など、どれをとっても素晴らしく、まさに総合芸術として完成度の高い作品ではないでしょうか。個人的には絵画的な構図と流れるようなカメラワークに特にセンスを感じます。

だから観るときも、本当は絵画やオブジェといった芸術作品を鑑賞するように見たほうがいいと思います。ただ2時間20分もそのような見方で観るのはしんどいかも知れませんね。そういう意味ではある程度の忍耐力を要求される映画です。

途中で飽きてしまってもそれはそれで仕方ないと思います。実は僕も1回目は退屈で半分寝てしまいましたから。けど、我慢して最後まで見れば(ま、我慢する必要はないですが…)きっと何かしら発見があると思います。

何気ない会話のシーンにドキッとするようなリアルな描写が見てとれたり、何気ないシーンにこそ美しいカットが潜んでいたりするので、一瞬たりとも油断が出来ません。

■演技に関して言えば、マルチェロ・マストロヤンニはとにかく絵になりますね。サングラスを指で下げるシーン、おどけたステップを踏んでみせるシーン…、一つ一つの動作が逐一絵になります。ダンディな中にも茶目っ気のあるところがいいですね。

アヌーク・エーメも素晴らしく、マルチェロ・マストロヤンニとの夫婦のやりとりを描いたシーンなどは、二人の微妙な関係をうまく表現していると思います。

それにしても未だにDVD化されないのはなぜなんでしょうか?


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