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「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」左とん平 [音楽の聴き方]

<作曲> 望月良道
<作詞> 郷伍郎
<リリース> 1973年
<収録アルバム> 「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」[CRCD 5005]

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■とにかく熱い!

最初に聞いたのは10年ぐらい前になるだろうか。
そのときすでに発売から20年以上経っていたにも関わらず、
かなりの衝撃を受けたのを覚えている。
最近になって、ようやくCDを手に入れることができたのだが、
改めて聴いてみて、やっぱり(E)!

なんと4度目の復刻だそうだ。
その間、大槻ケンヂや、最近ではカンニングなどによってカヴァーもされている。
ということは限定的な形であるにせよ、確実にニーズはあるわけだ。

左とん平といえば、僕なんか西遊記の猪八戒役がすぐに思い浮かぶのだが、
歌手というイメージはなかった。
しかしこの堂々たる歌いっぷりはどうだ。
この迫力、そして色気。

曲はいかにも70年代という感じの、歌謡ファンク・ブルース調で、
ファンキーなビートに乗って、ラップというかセリフが入ってくる。
さすがに役者だけあって、セリフの部分の説得力が全然違う。

サビの振り絞るようなシャウトは、そんじょそこらのシンガー顔負けだ。
特にエンディングへ向けて畳みかけるようなシャウトは圧巻。
まさに、これぞブルースという魂の叫びを聴かせてくれる。

きっとこの曲を左とん平以上にかっこよく歌えるシンガーは
そうはいないんじゃないだろうか。

■時代性と普遍性

歌詞がまた凄い。

 Hey you!
 Hey you, what's your name?
 Hey you!
 Hey you, what's your name?

冒頭のシャウト。
「あなたのお名前何てぇの?」というトニー谷のギャグを英語にした、
「ヘイ・ユー! ホワッチャー・ネーム?」という、とん平のギャグをモチーフにしたらしい。
初めにギャグありきというパターンだ。

 祇園精舎の鐘の声
 諸行無常の響きあり

シャウトの後のいわゆるAメロは、一転厳かに始まる。
言わずと知れた平家物語の一節。
いきなり凄いところから切り込んでくるもんだ。

 お袋のオッパイの味 おぼえてんのか?
 捨てた女の黒子の数 思い出せるか?

続いて硬派でワイルドな口調でまくしたてる。
現在の男性が失いつつある、昔気質な男らしさというものが
よく表れている。

 世の中スリバチだよ
 人生はスリコギだ おまえ baby!
 人生はスリコギなんだよ oh, my baby!
 このブルースを聴いてくれ

そして唐突に、人生哲学を披露する。
人生をスリコギに例えるなんて!!
このあと、スリコギは働けば働くほどすり減って死んでしまうと歌われる。

この曲が発表された1970年代前半は、高度経済成長期の末期。
戦後がむしゃらに働き続けてきた日本人の疲弊感、
人生これでよいのか、という価値観のゆらぎのようなものが見える。

そして俺はスリコギにしたヤツは誰なんだ、と続く。
ここで "Hey you, what's your name?"
の "you" が漠然とした相手を指しているのだと分かる。

そんなスリコギ人生は嫌だと叫ぶラスト。
いくら何でも、お前怯え過ぎだろというくらい、
怯えまくっているのがおかしい。

文体こそ時代を感じさせるものであるが、
こうした人生そのものへの問い、
自分を縛り付けているものへの漠然とした恐怖というのは、
個人的なレベルでみれば、いつの時代にも通じる普遍的なテーマだ。
だからこうして4度も復刻されるのだろう。

男の哀愁、愚かさを喜劇ドラマ風に歌った(語った)
カップリング曲も最高だ。


★Today's Set
1. とん平のヘイ・ユウ・ブルース(左とん平)
2. 東京っていい街だな(〃)
3. 続・東京っていい街だな(〃)


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