SSブログ

聴こえない音楽 ~「4分33秒」ジョン・ケージ~ [音楽の聴き方]

john_cage.jpg

<収録アルバム>『nova musicha n.1』
<作曲> John Cage
<録音> 1952年
-------------------------------------------------------------------------

■犬用の曲

ちょっと前の話だが、
ニュージーランドで、犬にしか聴こえない曲がチャートの1位になったらしい。
当然人間にとっては聴こえない、つまり無音ってこと。
いやあ、ニュージーランドは進んでますね。

ちょっと待ったぁ!

犬にしか聴こえない音を入れるっていうのは、
40年前にもうビートルズ「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」でやってるじゃん。
やっぱりビートルズはすげぇぜ!

ちょっと待たれい!

でも無音の曲ってことで言えば、ジョン・ケージ「4分33秒」が先でしょ!
ビートルズだって、前衛音楽の洗礼を少なからず受けてたわけだからね。

うぬぬ…

というわけで、無音の曲について。

僕のCDの棚にもジョン・ケージをはじめ、無音の曲を含むCDが3枚。
だから無音の曲自体は、そんなに珍しくないんだけど、
それらはあくまで人間を対象としたものであって、
ペット用の曲が、チャートの1位になってしまうというのは、
やっぱり、ついにここまで来たかという感じはします。

■音楽って何だ?

「そこに何も無い」ということを言い表すのに
「そこには無がある」というように、あえて肯定的な表現をすることがあるが、
その言い方にならえば、無音の曲というのは、
「無音が鳴っている曲」と言えなくもない。

無音の曲でもっとも有名なのは、ジョン・ケージ「4分33秒」だろう。
無音のくせに3つの楽章からなっていて、楽譜もちゃんとあるというのだから驚く。
といっても、楽譜にはただ「休み」と書いてあるだけ。

厳密に言えば、「4分33秒」は無音の曲というより、
「無演奏」の曲と言った方がいいのかもしれない。
『nova musicha n.1』に収録のバージョンを聴くと、
各楽章ごとに、ピアノの蓋の開け閉め(するだけ)の音がはっきり聴きとれる。

そもそもの意図は、コンサート会場での雑音に耳を傾けさせることにあったようだ。
例えば、観客のざわめきや、屋外なら鳥の声、風の音など。
そういった環境的な要素を含めて、音楽であると言いたいのかもしれないし、
あるいは、「休み」も音楽であると言いたいのかもしれない。

音楽とは何かということを、改めて考えさせてくれる哲学的な曲である。

■沈黙の力

スライ&ザ・ファミリー・ストーンの代表作『暴動』
そのタイトル曲も8秒の無音曲である。

タイトル曲という重み、それに「暴動」(原題は"There's A Riot Goin' On"
というセンセーショナルなタイトルから、
この無音(無言)の中に、強いメッセージが込められているのが分かる。

「沈黙は金」や「無言の圧力」という言葉があるように、
何も語らないことが、かえって説得力を持つということがあるが、
「暴動」も、そうした沈黙の力を利用したものといえるだろう。

■まっさらなキャンパス

ジョン・レノンの1973年の作品『ヌートピア宣言("Mind Games")』収録の
「ヌートピア国際賛歌("Nutopian International Anthem")」も6秒の無音曲だ。

領土も国境も法律もない、架空の理想国家ヌートピア。
宣言すれば誰でも国民になれる。
この6秒の間に好きな歌を想像すれば、それが国歌になるという。

このヌートピアの理念はもちろん、
"天国も地獄も宗教もない、平和な世界を想像してごらん" という
「イマジン」の理念を、より具体化したもの。

この場合の無は、まっさらなキャンパス、
何ものにも規定されない自由な精神の象徴といったところだろう。

もはや音楽というよりは、パフォーミング・アートって感じだけど、
聴く者に、より積極的な関与を促すこのアイディアは、
まさに今で言うインタラクティブ(双方向的)ってことの
走りなんじゃないかという気がします。

このように、無音の曲といっても三者三様、それなりに意図があるわけです。
そんな意図をくみ取りながら聴いてください。

それでは、ジョン・ケージ「4分33秒」、スライ&ザ・ファミリー・ストーン「暴動」、
ジョン・レノン「ヌートピア国際讃歌」3曲続けてどうぞ~

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ガタッ・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・ガタッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ガタッ

・・・・・・・・

・・・・・・

これ、ラジオだったら放送事故ですが、
映像だったらけっこう間抜けで面白いかもしれない、
と思って探したら、ありました。

「4分33秒」を実際にオーケストラで演奏(?)している映像。
シュールです!

★Today's Set
1.4'33"(John Cage)
2.There's A Riot Goin' On(Sly & The Family Stone)
3.Nutopian International Anthem(John Lennon)


nice!(3)  コメント(4) 
共通テーマ:音楽

nice! 3

コメント 4

walrus

こんちやさん、nice!ありがとうございます!
by walrus (2008-03-20 01:05) 

いっぷく

数学でゼロを発見したことと重なるように思えました。
walrusさんもよく探しましたね、この映像。
by いっぷく (2008-03-20 07:16) 

walrus

>いっぷくさん
YouTubeってすごいですよね。
ほかにもピアノバージョンとか、
ギターバージョンとか、
プロアマ問わずけっこう映像がありました。
by walrus (2008-03-20 14:59) 

walrus

はっこうさん、nice!ありがとうございます!
by walrus (2008-03-23 00:41) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。