『天才』パコ・デ・ルシア [音楽の聴き方]
<原題>「La Fabulosa Guitarra」Paco De Lucia(1967)
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言わずと知れたフラメンコギターの第一人者、
パコ・デ・ルシアのソロデビュー作。
『天才』とはまた随分大胆で、挑戦的な邦題をつけたものだ。
といっても、原題も「素晴らしいギター」という意味だから、
あまり変わりないか。
看板に偽りなし。と言いたいところだけど、
彼の音楽を言い表すのに、「天才」という表現すら物足りない。
何かに感動するのに、ことばや国境は関係ないように、
彼の音楽を理解するのに、フラメンコやジャズ、ロック
といったカテゴライズはあまり意味がないだろう。
いや、本当はすべての音楽において、
そのようなスタンスは、ひとつの前提としてあるべきだと思うのだが、
パコの音楽を聴くと、特にそういった思いを強く感じてしまう。
このアルバムは、あらゆるジャンルを超越した、
純粋な音楽の魅力に満ちあふれている。
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以下は直接『天才』とは関係ないが、パコの映像をいくつか。
「Monasterio De Sal 」ほか
『天才』もそうだが、この映像のように、ギター1本での演奏の方が、
指弾きによる微妙なニュアンスや、弦の振動が感じられ、個人的には好きだ。
右手は5本の指をフルに使い、左手はめまぐるしいポジションチェンジの一方、
力強く、華麗なフィンガリングを見せる。
視覚的にも華やかで、見ているだけで飽きない。
弾いてるときの表情もいい。
それに何といっても、ストロークの切れ味が素晴らしい!
またマイナーな展開の中に、メジャーが時折顔を出すコード感も独特だ。
カンテ(歌)のカマロン・デ・ラ・イスラと。
パコのギターもキレてますが、カマロンという人も凄い。
「Entre Dos Aguas」Paco De Lucia(1976)
アフリカンビートとの融合。見事にハマってます。
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パコのように、ジャンルを超越したところに存在する音楽というのは、
得てして異種格闘技戦に向かうことがある。
たとえばジミ・ヘンドリクスとマイルス・デイヴィスの接近のように。
パコも他ジャンルのミュージシャンと、多くの異種格闘技戦を行っている。
その中で改めて、彼のギタースタイルの特異性が浮き彫りになり、
返ってフラメンコというルーツが意識されることになる。
異種格闘技戦(1)対アル・ディ・メオラ、ジョン・マクラフリン戦
パコ・デ・ルシア、アル・ディ・メオラ、ジョン・マクラフリンという
いわゆるスーパーギタートリオの共演。
ジョン・マクラフリンという、僕の大好きなギタリストがいるにも関わらず、
どうしてもパコの演奏の方に目がいってしまう。
指弾きに比べると、ピック弾きはどうもこじんまりして見えてしまう。
またこういうタイプの曲では、
どうしてもパコのキレのある、ストロークが際立って聴こえる。
よってパコの勝ち!
異種格闘技戦(2)対ヤン・アッカーマン戦
思い切り空間系のエフェクトをかけ、エレキで対抗するヤン。
そんな開き直りが功を奏して、両者それぞれの持ち味を生かした好勝負となった。
しかしパコの貫禄勝ち!
★Today's Set
1. Gitanos Trianeros (Solea)(Paco De Lucia)
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