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マエダ [くたばれ!ジャイアンツ]

このところ調子が出なかった。
なんだか疲れやすいし、眠いし、かといって眠れないし、
頭の中のコードはぐちゃぐちゃにこんがらがったまま、
無為に日々が過ぎていく。無力感に襲われる毎日。
あまり音楽を聴く気にもなれない。
なかなか抜け出す糸口が見つからない。

そんなとき前田の2000本安打のニュースが飛び込んできた。

僕は広島カープのファンではないが、
前田は特別な選手だ。
現役の選手の中では最も好きな選手かもしれない。

誰もが認める天才バッター。
野球ファン以外にはあまり馴染みがないかも知れないが、
あのイチローが認める(おそらく唯一の日本人)バッターといえば、
そのすごさが分かっていただけると思う。
イチローの背番号51は、前田が当初つけていた番号でもある。

決して愛想のいい男ではない。
4番を任されても、器ではないと固辞したり、
ヒーローインタビューも自分が納得いかなければ拒否する男だ。

その裏には、追い求める理想の高さ、
ストイックなまでの野球にかける真面目な姿勢、
責任感といったものがあるだろう。

完璧主義者ゆえに、ちょっとした否も見過ごせず、
ときに自己批判的な発言となって表れる。
特に怪我をして満足なプレーが出来なくなってからは
自虐的な発言が目立つ。

曰く、「いっそ両足とも切れて欲しい」「前田智徳は死んだ」
「自分はガラクタ」など。

そんな前田の姿に、
納得のいかない作品を「こんなのはクソだ」と言って叩き割る陶芸家、
あるいは、描き上がった作品が気に入らず、
キャンパスを引き裂く画家の姿を重ねてしまう。

そう、前田という男は、アスリートというよりは、
アーチストといった方がふさわしいかも知れない。

怪我さえなければ、とっくの昔に達成していた記録だったろうが、
その困難を乗り越えての記録達成には、素直に頭が下がるし、
勇気をもらった。


タグ:前田智徳
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