SSブログ

『ビフォア・ザ・フロスト/アンティル・ザ・フリーズ』ザ・ブラック・クロウズ [音楽の聴き方]

before_the_frost.jpg until_the_freeze.jpg

『Before The Frost...』The Black Crowes(2009)

 1. Good Morning Captain
 2. Been A Long Time (Waiting On Love)
 3. Appaloosa
 4. A Train Still Makes A Lonely Sound
 5. I Ain't Hiding
 6. Kept My Soul
 7. What Is Home
 8. Houston Don't Dream About Me
 9. Make Glad
10. And The Band Played On
11. Last Place That Love Lives

『...Until The Freeze』The Black Crowes(2009)

 1. Aimless Peacock
 2. Shady Grove
 3. Garden Gate
 4. Greenhorn
 5. Shine Along
 6. Roll Old Jeremiah
 7. Lady Of Avenue A
 8. So Many Times
 9. Fork In The River

-------------------------------------------------------------------------

■ユニークなフォーマット

ウッドストックにあるザ・バンドリヴォン・ヘルムのスタジオで、
5日間に渡って録音された20曲のマテリアルは、
『ビフォア・ザ・フロスト』『アンティル・ザ・フリーズ』という
2枚のアルバムに分けて収録されることになる。

タイトルやジャケットからして、この2作はまさに陰と陽、裏と表の対の関係、
あるいは生き別れた兄弟のような関係といってもいい。

普通なら2枚組、もしくは2作同時発売となるとこなんだろうけど、
CD化されたのは『ビフォア・ザ・フロスト』のみで、
『アンティル・ザ・フリーズ』の方は『ビフォア・ザ・フロスト』を買えば、
無料でダウンロード出来るという仕組みだ。

残念ながら日本盤はmp3形式のみだが(なぜ?!)、
輸入盤ではより高音質なflac形式のファイルもダウンロードできる。
個人的には2枚組として出して欲しかったところだけど、
ともかく1枚分の料金で、2枚分の曲をゲットできるのだから、これはお得!

いかにもファンを大事にする彼ららしく、
ファンに金銭的な負担を強いないようにという配慮もあるのだろうが、
何ともユニークで、リスナー・フレンドリーなアイディアではないか。

ちなみに限定のアナログ盤では、
『Before The Frost...Until The Freeze』として、2枚組で発売、
また、iTunes Storeでもひとつのアルバムとして販売されている。

 

■常に新しいことを

「Good Morning Captain」The Black Crowes

彼らはこれまでにも、
いち早く、CDにビデオ・クリップやスクリーン・セーバーを付けたり、
特設サイトへ誘導して、ライブのストリーミングやダウンロードを可能にさせるなど、
CDとPCやネットとの連動をはかってきたし、
Webサイトの充実ぶりも他のアーチストに先駆けていたと思う。

またPAを通したライブ音源を公式ブートレグとしてリリースしたり、
ファン自身にライブの録音を許可したりといったことも。

一見アナログ的に見える彼らだが、
インターネットや、マルチメディアなどに対して早い段階から関心を持ち、
ファンとの関わりにおいても、様々な試みを模索してきたのが彼らなのだ。

そんな姿勢はその音楽にも現れていて、
レトロで保守的に思える彼らの音楽も、何度も書いてきたが(何度でも書こう!)、
アルバムごとに常に進化(深化、新化)を続けている。
だからどのアルバムもまるで違うし、その上どれも素晴らしいときてる!

復活作となった前作『ウォーペイント』は、
それまでと比べ、かなり落ち着いた印象を持ったものだが、
今作ではさらにレイドバックし、渋みを増した感じ。

リヴォンのスタジオでレコーディングされたから、
というわけでもないだろうが、そこかしこにザ・バンドっぽさが。

クリスのヴォーカルも、かつてのエネルギッシュに張り上げるスタイルから、
適度に力の抜けたスタイルに変化。

また、シタール、マンドリン、バンジョー、フィドル、ペダル・スティールなど、
使用されている楽器をみれば、大体どんな方向なのか分かる。


■『ビフォア・ザ・フロスト』

彼らの凄さは、~~風を感じさせても、決してそれだけでは終わらず、
そこに新たなテイストを付加して、独自のスタイルを作り上げていることにある。

例えばこのアルバムからは、
ザ・バンドの他にも、レーナード・スキナードスティーブン・スティルス
フェイセズ
ZEP…といった様々なエッセンスを感じたりもするが、
やはりここにあるのはブラック・クロウズ以外の何ものでもないという、
揺るぎない世界を構築している。

こんなレイドバックした曲の中に、
70年代ディスコ風のビートを刻むT5「I Ain't Hiding」のような異物を
唐突にをぶち込んできたりするのも彼ららしい。
いかにもなコーラスやギターのフレーズなどは、少しこっ恥ずかしくも聴こえるが、
彼らなりの遊び心を感じる曲だ。

T7「What Is Home」は、ブラック・クロウズにおける
リッチ・ロビンソンの初リード・ヴォーカル曲で、
クリスとは真逆の繊細なヴォーカルが曲にハマっていて、これが実にいい感じ。
今後、彼のヴォーカル曲がコンスタントに聴けるようになれば、
バンドとしての深みはさらに増しそう。

「What Is Home」The Black Crowes

 

■『アンティル・ザ・フリーズ』

『ビフォア・ザ・フロスト』の方はロック色が強いが、
『アンティル・ザ・フリーズ』の方は、アコースティック中心で、
カントリー、フォーク色がぐっと強くなっている。

インド音楽とカントリーとブルースとサイケが出会ったような
T1「Aimless Peacock」から、そのディープな世界へ引きずり込まれるが、

とくにT3「Garden Gate」、T5「Roll Old Jeremiah」は、
それぞれフィドル、ペダル・スティールをフィーチャーした、
いかにもなブルーグラス/カントリー調の曲。

ここまで露骨なカントリーへの歩み寄りには、意表をつかれたが、
彼らの奥深い音楽的バックグラウンドや、これまでの歩みを考えれば、
自然に受け入れられる変化でもある。

T2「Shady Grove」は、『アンティル~』の中では唯一ロック然とした
(またしてもザ・バンドの亡霊がつきまとったかのような)曲だが、
印象的なスライド・ギターと隠し味的なピアノがいい感じ。

カントリーとゴスペルがミックスされたようなT5「Shine Along」では、
このアルバムでは稀少な、黒人が憑依したようなクリスのソウルフルな声が聴ける。
ラフな歌い方がたまらない。

T8「So Many Times」はスティーヴン・スティルスのカヴァー。
相変わらずカヴァーのセンスも抜群だ。

 

■噛めば噛むほど…

噛めば噛むほど味が出る音楽というのがあるが、
この2枚は僕にとってまさにそんなアルバムだ。

これまで彼らのアルバムには、聴いた瞬間これはいいと思える曲が
少なくとも1曲はあったが、正直いうと今回そこまでの曲はなかった。

けれどスキップしたいと思う曲もなく、
全曲聴き終えると、また最初から聴きたいと思わせるような作品で、
そうして何度か聴いているうちに、
次第に個々の曲が存在感を持ち始め、愛しくなってくるというような、
そんなアルバムである。

 

■ロックンロール・バンドのバラード

それにしても彼らは相変わらず美しいバラードを書く。
これは貴重な才能だ。

バラード=売れ線という意識からか、
安易にバラードに走るロック・バンドも少なくないが、
その割には、バラードの名曲は少ないという気がする。

最初の1曲2曲はよくても、そのうちどうしても似たり寄ったりになってしまい、
ともすると、そこに作り手の感情の薄まりみたいなものを感じるときがあって、
またか…というようなことがけっこうあるのだけど、

音楽的ボキャブラリーの豊富な彼らの場合、決してそのようなことがなく、
どの曲もエモーショナルで、高純度の輝きを放っている。
そもそもバラードだなんだという以前に、曲としての必然性を強く感じる。

『ビフォア・ザ・フロスト』のT3「Appaloosa」
T8「Houston Don't Dream About Me」、T11「The Last Place That Love Lives」
『アンティル・ザ・フリーズ』のT4「Greenhorn」、T7「Lady Of Avenue A」
T9「Fork In The River」どれもよく出来ている。

「Appaloosa」The Black Crowes


■スタジオ・ライブ録音

レコーディングにはファンが招待され、スタジオ・ライブ形式で録音された。
曲の最後に拍手や歓声が入っているのはそのため。
この拍手はちょっとわざとらしい気もするけど…

それにしても、ライブとは思えないクオリティ!
現役最強のライブ・バンドでもある彼らだから、当然かも知れないが、
個々の技術はもちろん、バンドとして息があっていないと駄目だし、
これだけいい音で録るには、かなり綿密な計算が必要だったのではないか。

 

現在進行形のアーチストで、最も好きなアーチストが彼らだ。
…というのは前にも書いたが、新作を耳にするたびに、そのことを再確認させてくれる。
そんなバンドがいるというのは、きっと幸せなことなんだろう。

どんなに好きなアーチストでも、例えばビートルズに対してさえも、
僕は批判的な視点を持っているつもりでいるのだが、
ブラック・クロウズに関しては、今のところそれがほとんどない。
だからこそ好きだとも言えるのだが…

自分では、決して盲目的に好きなわけではなく、客観的に聴いているつもりだけど、
もしかしたら、単に僕の感覚が麻痺しているだけなのかも知れないと思ったりする。
けれどそれはそれで、それもまたひとつの幸せではないかとも。


nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 2

yukky_z

「ニックネームとアイコン」をちょこっとだけ
変更しましたので、一応お知らせしておきますね。
では今後とも、宜しくお願いします^^

by yukky_z (2009-12-09 21:58) 

walrus

yukky_zさん、nice!ありがとうございます。
こちらこそ、今後ともよろしくお願いします!
by walrus (2009-12-10 04:06) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。