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「Lookin' Through The Windows」Jackson 5〜マイケル・ジャクソンの超越的・抽象的身体 [音楽の聴き方]

<作曲>C.Davis
<収録アルバム>「Lookin' Through The Windows」(1972)
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■われわれは好むと好まざるとに関わらず、様々な条件(国籍、血液型、趣味嗜好など)によって、便宜的にグループ分けされることがある。

例えば僕という人間を、人種、性別、年令で分けるとすると、
“黄色人種、男性、成年”ということになる。
ところが、同じ条件でマイケル・ジャクソンを分類しようとするのは、
実はそう簡単なことではない。
もちろん生物学的には、“黒人、男性、成年”なんだけど…

①白人性
まず、彼の現在の容姿は黒人のそれとは大きく異なる。
度重なる整形による彼の白い肌、尖った鼻は明らかに白人の特徴だ。
(彼のアルバムのジャケットを年代順に並べてみると顔の変遷がよく分かる)

もしマイケルについて予備知識のない人が、初めて彼の写真を見せられたとしたら
きっと白人だと思うだろう。

②女性性
またメイクによって強調された目や長い髪などから、
女性だと思う人の方が案外多いかも知れない。

マイケルの女性らしさは、見た目以上にむしろ彼の声に表れていて、
彼の繊細な唱法や高い声のトーンは男性的というよりは女性的だ。
「She's Out Of My Life」「I Just Can't Stop Loving You」などは
本当に女性が歌っているのかと思うほどである。

③少年性
彼の少年性は本人も認めているが、何より自宅敷地内にある遊園地「ネバーランド」の存在が象徴している。

つまり、マイケルとはある意味

  • 黒人であり白人
  • 男性であり女性
  • 成年であり少年

であるといえる。

白人を非黒人という意味で広義に捉えれば、彼はすべての要素を持っていることになる。
それはある種の完全性を備えた、特権的、超越的な身体として表されるだろう。

だが、反転すれば

  • 黒人でも白人でもない
  • 男性でも女性でもない
  • 成年でも少年でもない

ということであり、彼の身体は具象性を剥奪された抽象的な身体に還元される。

このような超越的かつ抽象的な特徴を持つ身体は、
まさしく「神」あるいは「怪物」そのものであると言えないだろうか。

メディアを利用した戦略と天才的な才能によって、
カリスマ的なスーパースターとしてポップシーンの頂点を上り詰めていく過程は、
身体レベルでこのような超越的かつ抽象的な身体を獲得していく過程でもあった。
それゆえ彼はある時期まさに「神(怪物)」としてポップシーンに君臨し、
文字通り「神話」を創造することが出来たのだ。

だがすでに全盛期の才能も戦略も翳りを見せている今、
身体の異形性だけが後遺症のように彼の肉体に残り続けるのを見るのは、
ファンでなくとも寂しいものがある。

■マイケルの身体と音楽の関係性
マイケルがこのように本来の自分の姿から逸脱していった背景には、
少年期に父親から受けた虐待によるトラウマが関係しているように思う。

成長するにつれ、最も嫌悪する父親に自分の姿が似ていくのが、
耐えられなかったんじゃないだろうか。

だから、父親を思い出させる、“黒人、男性、成年”の要素を拒絶し、
対極の要素を求めたのだと思う。

こうした身体的な特徴は彼の音楽にも反映されていて、
男性的な力強さと女性的な繊細さの同居、
黒人のリズム感覚と白人の洗練された感覚の同居、
など両者の特徴を折衷的に取り入れたものとなっている。

僕は熱烈なマイケルのファンではないけど、
「Thriller」はどう転んでも名曲だと思うし、
ジャクソン5〜ソロの初期の頃のマイケルは本当に素晴らしい。

■「Lookin' Through The Windows」
「I Want You Back」や「ABC」に比べると、
成長したマイケル(といってもまだ13才!)に合わせたようなアダルトな曲調で、
サビでの伸びやかではち切れんばかりのマイケルのボーカルに加え、
緊張感のあるイントロ(コーラスがかっこいい!)〜
しっとりとしたAメロ〜軽快なサビという構成も完璧。

先日のマイケルの裁判に関する報道を見ても明らかなように、
どうしても彼のスキャンダルな面ばかりが取り沙汰されるのは、
ある意味しょうがないにしても、
もう少し彼の純粋な音楽や、詩に込められた平和への願いに耳を傾けても
いいのではないでしょうか。

★Today's Set
1. Lookin' Through The Windows(Jackson 5)
2. I Want You Back(Jackson 5)
3. ABC(Jackson 5)
4. The Love You save(Jackson 5)
5. Dancing Machine(Jackson 5)
6. Ben(Michael Jackson)
7. Greatest Show On Earth(Michael Jackson)
8. Shoo-Be-Doo-Be-Doo-Da-Day(Michael Jackson)
9. Thriller(Michael Jackson)
10. I Just Can't Stop Loving You(Michael Jackson)

ベンのテーマ ~ベスト・オブ・マイケル・ジャクソン

ベンのテーマ ~ベスト・オブ・マイケル・ジャクソン

  • アーティスト: マイケル・ジャクソン, ジャクソン5
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルミュージック
  • 発売日: 2005/05/25
  • メディア: CD


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