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ボブ・ディラン「ノ−・ディレクション・ホ−ム」〜視線の先にあるもの〜 [映画の観方]


No Direction Home (2pc) (Full)







<原題> No Direction Home
<監督> マ−ティン・スコセッシ
<公開> 2005年
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先日「ノ−・ディレクション・ホ−ム」を観にいった。
小さな劇場だし、金曜ということもあり、
ひょっとして座れないんじゃないかと思い、少し早めに行ったんだけど…
席はガラガラ。とんだ取り越し苦労だった。
たしかに3時間半は長いけどさ…それにしても、ちょっと寂しいなぁ。
思った以上に世間はボブ・ディランに関心ないらしい。
ま、でも混んでるより、空いてる方が落ち着いて観られるからいいけど。

この映画は、おそらくボブ・ディランのキャリアの中でも、
もっとも輝いていたであろう、60年代の彼にスポットを当てたドキュメンタリ−で、
ふんだんに盛り込まれた当時の演奏シ−ン、
インタビュ−やオフショットなど貴重な映像に加え、
ディラン本人や関係者たちが当時を振り返り、歴史の真実に迫る。

それにしても、60年代のボブ・ディラン、カッコよすぎ!!
これを見ると、当時の彼がいかに魅力的で、カリスマ性を持っていたかが分かる。
ジョン・レノンやジミ・ヘンドリックスが影響を受けたのもうなずけるってもんです。

「ライク・ア・ロ−リング・スト−ン」で幕を開けた瞬間から
脳内のエンドルフィンがバババっと、大量に分泌されていくのを感じた。

達観したような表情で、中空の一点を見据えながら歌うディラン。
聴衆に対してというよりは、彼にしか見えない“何か”に対して歌っているかのようだ。

彼が素晴らしいのは、周囲に左右されず自分の信念を貫き通したこと、
自らのア−チストとしての欲求に忠実だったことだ。
マスコミに踊らされることもなければ、ファンに媚びることもない。
そういう意味では彼はエンターテイナーではなく、真のアーチストと言える。

熱烈なファンから「裏切り者」と非難されることとなった、
フォ−クからロックへの“転身”も、
「フォ−ク界のヒ−ロ−」「プロテストシンガ−」…
というパブリックイメ−ジに縛られることなく、
ア−チストとして自由であろうとした結果で、
常に変化を求めていた彼にしてみれば、ごく自然な成りゆきだったのだろう。

実際、彼の曲はライブの度に姿を変えていたようだし、
それは、この映画をみればよく分かる。
当時活動を共にしていた、ジョ−ン・バエズも
同じ曲でも昨日と今日で拍子が違っていた、と証言していた。

そこからは、常にいいものを模索する姿勢であったり、
その日の気分や感覚を大事にし、
まさにライブ感をステージに反映させようとする姿勢が感じられる。

そうしたディランの変化に対する周囲の過剰な反応が、
彼への攻撃という形となって表れた、ひとつの象徴的な事件が、
1966年 英国ツアーでの伝説的なライブだ。

前半はいつも通りアコギでの弾き語り。
だが、後半エレキに持ちかえ、バックバンドを従えて登場すると、
激しいブーイング。

そんな中 淡々と、しかし最高のパフォ−マンスを見せつけるディランの姿に
思わず胸が熱くなる。

エンディングで再び「ライク・ア・ローリング・ストーン」。
「裏切り者!」と野次られ、
「お前は信じない!」 と返したディランが次に歌ったのがこの歌だ。

彼が客席でなく、中空を見つめていた訳が少し分かったような気がした。
視線の先には、彼の信じるものが見えていたに違いない。

「ノー・ディレクション・ホーム」日本公式サイト

★Today's Set
1. Like A Rolling Stone(Bob Dylan)
2. You've Got A Hide Your Love Away(The Beatles)
3. All Along The Watchtower(Jimi Hendrix)
4. Ballad Of A Thin Man(Bob Dylan)
5. Blowin' In The Wind(〃)
6. A Hard Rain's A-Gonna Fall(〃)


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