SSブログ

『エルダー』エルダー・ジャンギロフ [音楽の聴き方]


エルダー








M氏とドライブに行くとき、M氏は決まって大量のジャズCDを車内BGM用にと持参してくる(頼んでもいないのに…)。その中にはジャズファンなら誰もが知っているようなものもあれば、コアなファンしか知らないようなものまでいろいろあって、せっかくなので、僕もこの日ばかりは「ようし今日はジャズを聴くぞ」と覚悟を決めて、ジャズモードに切り替える。

ところが、正直いいなと思うものはあっても、その場限りで終わってしまうことが多かった。そもそも、彼はどちらかと言うとビッグバンド系、ハードバップ系、僕はモード系、フュージョン系が好みで、好きなアーチストも、彼はクリフォード・ブラウンバド・パウエルなど、テクニカル系で、僕はマイルスコルトレーンハービー・ハンコックなど雰囲気系(?)が好きときてる。もちろんビッグバンドも聴かないわけじゃないけど、根がロックの人間なせいか、微妙に嗜好が異なるのだ。

ところが、このエルダー・ジャンギロフを聴いたときにはこれは長い付き合いになりそうだな、と直感した。即座に「買い」だと思った。このとき聴いたのはブルーノートでのライブ盤で、全体としてはまとまりに欠ける印象だったが、1曲目のバンドが渾然一体となってグルーヴしていくカッコよさ、ラストの「A列車で行こう」の斬新なアレンジはちょっとした衝撃でした。

何より圧倒的なテクニック。これ見よがしに弾きまくる超高速パッセージ。
一体何本手が生えてるんだと言いたくなるようなプレイ。
それに加え、焼けどしそうなほどに熱く、エネルギッシュな演奏。

帰って早速調べてみると、昨年メジャーデビューしたばかりで、しかもまだ19才(!)。
天才ジャズピアニストとしてすでに大きな注目を集めている存在だったんですね。
そりゃそうだ。これだけ弾けりゃ。

僕はAmazonで、このライブ盤ではなくデビュー盤の「Eldar」を注文した。
なぜなら「処女航海」「ラウンド・ミッドナイト」が入っていたからだ。

メロウな曲からファンキーな曲、古典的なジャズまで
オールマイティにこなす縦横無尽さはライブ盤と変わらないが、
全体の統一感としてはこちらの方があるような気がする。

個人的には彼の偏執狂的なリズムアプローチに魅力を感じます。
基本のリズムを川の流れとするなら、彼の弾くフレーズは、
決して川面を流れる花びらのように優雅なものではなく、
川の中を自在に泳ぎ回る魚のように、もっと動的で変化に富んだものである。
例えば2拍子のところで3連フレーズを刻んでみたり、
倍で刻んでみたり、流れに逆らうようなリズムチェンジが頻繁に行われるのだ。
だから聴いていて飽きない。

目にも止まらぬスピードで弾きまくるのも、
拍をどれだけ細かく解体できるかという
リズムアプローチの一環と考えることもできる。

だが、どんなに速かろうが、難解なフレーズが弾けようが、
若かろうが(このデビュー盤録音時は17才だそうです…)、
重要なのは音楽性ですよね?

その点このジャンギロフは音楽性も兼ね備えている。
何よりジャズミュージックへの深い敬意を感じる。
安易に使いたくはありませんが、
まさしく「天才」といってもいいのかも知れません。

そして忘れてはならないのが、
この見事な音楽を肉付けするベースとドラムの存在。
どんなに、ピアノが素晴らしくても、他の楽器が良くなければ、
作品としては冴えないものになってしまう。

そういう意味ではこの作品は非常に味わい深い1枚だ。

 

★Today's Set
1. What Is This Thing Called Love(Eldar Djangirov)
2. Take The "A" Train(〃)
3. Sweet Georgia Brown(〃)
4. Moanin'(〃)
5. Maiden Voyage(Herbie Hancock)
6.  〃(Eldar Djangirov)
7. 'Round Midnight(Theronius Monk)
8.  〃(Eldar Djangirov)
9. Haunted Heart(Bill Evans)


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

「竹蔵」日本ビーンズ株式会社9.11 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。