「レット・イット・ビー」 ~胸にしみる理由(3) [音楽の聴き方]
■アーメンに代わる祈りの言葉
「レット・イット・ビー」のコード進行をさらによく眺めてみれば、
Aメロの4小節目、サビの2、4小節目が
“F-C”というコード進行になっている(赤字の部分)。
コード進行 | |
A(Aメロ) | |C G |Am F |C G |F C | |
B(サビ) | |Am Am/G |F C |C G |F C | |
この“F-C”という進行は、
いわゆる賛美歌などの最後で「アーメン」というときのコード進行と同じで、
そこから、この進行で終止することを「アーメン終止」と言ったりもする。
やはり「アーメン」の印象があるせいか、
敬虔な雰囲気があり、やすらぎを感じさせる進行だ。
まさに魂を浄化させてくれるような響きといっていい。
「レット・イット・ビー」では、このアーメン進行が象徴的に使われている。
この“F-C”というアーメン進行を随所にちりばめ、繰り返すことで、
宗教的な癒しの効果が増幅されているわけだ。
そして気付いたのだが、
このアーメン進行の部分には、
すべて同じ言葉が乗っている。
(厳密には“F-C”の手前から食って入る形)
それがタイトルの「Let It Be」という言葉である。
つまり「Let It Be」とは、アーメンに変わる祈りの言葉なのだ。
■ヴォーカルの素晴らしさ
この曲はまた、ビートルズ最後のシングルとなったことから、
ビートルズの終わりを嫌が上にも痛感させられ、切ない気分にもなる。
だが、ポールの説得力のあるヴォーカルがなければ、
これほど心に響いてきただろうか。
ともすれば単調なメロディーを、
起伏を交えながら、エモーショナルに歌い上げるポールの、
真に迫ったヴォーカルが素晴らしい。
個人的には『レット・イット・ビー・ネイキッド』のヴァージョンより、
従来のヴァージョンのヴォーカルの方が好きだ。
■バンドの状況を映し出したリアルなサウンド
バックのサウンドも、
バンドの雰囲気をそのまま持ち込んだようリアルさがある。
迷走するギター・ソロは、そんな空気を象徴しているようだ。
けれどジョージのギターはロック・バンドであることを忘れないし、
リンゴのフィルも素晴らしい。
残念なのは、ジョンのベースとコーラスが、レコーディングはしたものの、
完成バージョンでは差し替えられていることだ。
ただ『レット・イット・ビー・ネイキッド』のベースがジョンだとするなら、
ポールによって差し替えられたベースも、
ジョンのフレーズをまったく無視したものでなく、
ジョンのプレイを尊重し、残そうとしているように思える。
そういう意味でも、これは紛れのないビートルズのサウンドである。
…と思うのは都合のいい解釈だろうか。
■
「レット・イット・ビー」は普遍的な救いの歌である。
優しく美しいメロディと単純で安定した構造のバラードは、癒しや安らぎを演出し、
また流れるようなコード進行は「なすがままに身を委ねる」
というメッセージを体現している。
アーメン進行に乗せて何度もリフレインされる祈りの言葉「Let it be」。
そこにゴスペル的な味付けをすることによって、この曲は説得力を持つ。
一方でこれはポールの心の叫びであり、
その迫真のヴォーカル、バンドの末期を象徴するサウンドは、
当時の状況を重ね合わせることで、よりいっそう胸に迫ってくるのだ。
「Let It Be」The Beatles
個人的に書いた曲が、
普遍的な曲となってみんなに届いている。
だからコノ曲は説得力があるし、
いつまでも残るんでしょうね^^。
by DEBDYLAN (2010-01-11 00:25)
DEBDYLANさん
もう40年も前の曲なのに、未だに色褪せてないなんて凄いですよね。
きっと100年後、いや500年後も残ってるでしょうね。
最後まで、お付き合いいただきありがとうございました。
by walrus (2010-01-17 12:53)
何だかんだ言っても、スペクター・ヴァージョンの
「Let It Be」が好きです! ジョージのギターソロも
一番ロックしていて良いですよね^^
by yukky_z (2010-01-17 21:05)
yukky_zさん
僕もギターソロはスペクター・バージョンがいいと思います。
何となく不安定なんですけど、生々しくて、ロックしてますよね。
ジョージ・マーティン版の方は、フレーズもよくないし、
エフェクトをかけてごまかしてる感じがしますよね。
by walrus (2010-01-25 04:09)