「ミーン・ストリート」(1973) [映画の観方]
<原題> Mean Streets
<監督> マーティン・スコセッシ
<出演> ハーヴェイ・カイテル、ロバート・デ・ニーロ
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借金は返さない。親友にも平気で嘘をつく。
おまけに短気で衝動的。
通りすがりの相手に殴りかかったり、向いのアパートに銃をぶっ放したり、
完全にネジが一本とんでいるとしか思えない。
絶対友達にはなりたくないタイプだ。
そんな絵に書いたような、どうしようもない男ジョニーを、
若きロバート・デ・ニーロが魅力的に演じる。
やっぱり、この頃のデ・ニーロは最高だ。
なんてったって、あの松田優作が意識するくらいだもの。
「レイジング・ブル」や「タクシー・ドライバー」のデ・ニーロもいいけど、
個人的にはこの「ミーン・ストリート」のデ・ニーロが一番好きだ。
主演のハ−ヴェイ・カイテルには悪いけど、完全にデ・ニーロの映画だね、これは。
■
厄介物のジョニーを、「根はいいやつ」と言ってかばい続ける
親友のチャーリー(ハーヴェイ・カイテル)。
この映画は、そんな二人の友情を超えた物語であり、
ニューヨークのリトル・イタリーの若者の日常をリアルに描いた青春映画だ。
とまあ、簡単に言うとそういうことになる。
この作品では“魂の救済”というのがひとつのテーマになっていて、
信仰に目覚めたチャーリーは、これまでの自分の過ちを償うため、
自らに精神的な刑罰を望む(精神的マゾ?)。
それがジョニーを救うこと。
まるで二人の関係は、愚かな行為をくり返して止まない「人間」と、
その罪を一手に引き受ける、「イエス・キリスト」のようにも思えてくる。
■
この映画の魅力を一言で語るのは難しい。
インディペンデント系特有の向こう見ずなイキのよさ、
インプロヴィゼーションによるリアルな演技、
新進気鋭の監督のとんがったセンス、
名を挙げようと目論む若き名優たちのギラギラした演技、
アンチハリウッド的な、唐突なラスト…
しかしやはり何といっても、デ・ニーロだ!
ただ、エキセントリックでクレイジーなだけでなく、
背景にある、貧しい社会、犯罪と隣り合わせの日常、
満足な教育も受けられない環境…
といったバックグラウンドまで見事に体現している。
それは演技というものを越え、完全にジョニーに同化しているといっていい。
銃をぶっ放した後に、興奮覚めやらぬ状態の中、
銃を手に持っていることなどすっかり忘れてしまったかのように、
カイテルにあっさり銃を渡してしまうシーンの自然さがいい。
■
もう一つこの映画でカギとなるのが、ポップチューンの粋な使い方だ。
古くは「ウッドストック」(編集)に始まり、
ザ・バンドの「ラスト・ワルツ」(監督)や
ボブ・ディランの「ノー・ディレクション・ホーム」(監督)、
「THE BLUES Movie Project」(製作総指揮/監督)といったドキュメンタリーもの、
ドラマではサックス奏者を描いた「ニューヨーク・ニューヨーク」(監督)、
「ラウンド・ミッドナイト」(出演)と
音楽そのものを題材にした作品も数多いスコセッシだけに、
音楽には相当のこだわりがあるとみえ、
冒頭のロネッツ「ビー・マイ・ベイビー」など
印象的な使い方が目を引く。
中でも特に印象深いのが、
ジョニーがチャーリーの待つ酒場にやってくるシーン。
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赤く妖艶なライトに照らされた店内。
そこへジョニーが二人の女性を連れて入って来る。
ジョニーを見つけたチャーリー。
と、音楽が消え、チャーリーの心の声。
《 刑罰があそこにやってきました 》
すかさず「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」のリフ。
スローモーションでチャーリーに迫っていくカメラ。カット。
女性を両脇にかかえ、チャーリーの元へ近付いてくるジョニー…
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イカしたシーンだ。
ジョニーのテーマ曲のようなこの曲は、
まるでこのシーンの為に書かれたのではないかというくらい
シーンにマッチしている。
★Today's Set
1. Jumpin' Jack Flash(The Rolling Stones)
2. Be My Baby(The Ronettes)
3. Please Mr. Postman(The Marvelettes)
4. Steppin' Out(John Mayall & The Blues Breakers)
5. I Looked Away(Derek The Dominos)
6. Tell Me(The Rolling Stones)
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