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『黒船』サディスティック・ミカ・バンド [音楽の聴き方]

kurofune.jpg

『黒船』サディスティック・ミカ・バンド(1974年)

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以前好きなアルバムベスト20を挙げたが、
その際、時代やジャンル、洋邦のしばりは設けなかったにもかかわらず、
結果的に、64~74年の洋楽ロック(一部ジャズ)に偏ってしまった。

けれど、このサディスティック・ミカ・バンド『黒船』は、
そこに入れてもおかしくないくらい好きで、
邦楽アルバムに限れば、これはもうダントツの1位だ。

ミカ・バンドに在籍したメンバーのキャリアを俯瞰すれば、
日本のロックの歴史が見える、といっても過言ではない重要人物がずらり。
加藤和彦高橋幸宏高中正義小原礼つのだひろ後藤次利

だからという訳ではないけれど、とにかく最高!!
楽曲、演奏、コンセプト、どれをとっても文句なし!

このアルバムは、タイトルにもある「黒船」の来航をモチーフに、
洋楽的なサウンドに、「和」のテイストを織り込んだコンセプト・アルバム。
コンセプト・アルバムというだけで、僕の中ではポイントアップ。

クリス・トーマスをプロデューサーに迎えてのロンドン・レコーディングで、
海外でも高く評価されたというのが、うなずけるサウンドだ。

これはもう、邦楽というレベルで括れるサウンドじゃない。


T-1「墨絵の国へ」

オリエンタルな美しい響きから、静かに始まるオープニングは、
アルバム全体のイントロダクションとして、有効に機能している。

歌入り後は、メインの加藤のボーカルを中央に、
左右の二人が、同じ歌詞をナレーションで、バラバラに語るというのが面白い。

小原のベースの表現力は、この曲を2倍にも3倍にも高めている気がする。

T-2「何かが海をやってくる」

1曲目の終わりから切れ目なく続く、組曲風な展開。
グルーヴィーなベースのリフが入ってくる瞬間は、いつ聴いてもゾクゾクする。

2コードのフュージョン・ロックで、
終盤へ向け、全体の演奏が、徐々に盛り上がっていくさまは凄い。
ベースはもちろん、幸宏のドラムも最高だが、
何といっても高中のギターソロが、切れに切れている。


T-3「タイムマシンにお願い」

2曲目のエンディングを打ち破るように、唐突に始まる彼らの代表曲。
この曲のみ、ミカがメイン・ボーカル。

そのせいか、アルバムの中では、やや浮いた感じがしないでもないが、
この曲があるのとないのでは、アルバムの輝きがまるで違う気がする。
この曲の華やかさが、他の曲の陰影を浮かび上がらせているというか…

「アハハン」という歌詞のように、ノーテンキな印象もあるが、
演奏はかなり気合いが乗っていて、ハイテンション。

エンディングもまた、歌詞をぶつ切りにして唐突に終わるという凝りよう。

T-4「黒船(嘉永6年6月2日)」

変拍子のフュージョン風インスト。
タイトルからして普通じゃない。

T-5 「黒船(嘉永6年6月3日)」

「アーッ」とか「ウッ」とか叫んでいるだけなのに、
こんなにかっこいいのはなぜ?

T-6 「黒船(嘉永6年6月4日)」

高中の泣きのギターは、ロック史(洋邦問わず)に残る名演だと思う。うん。

T-7 「よろしくどうぞ」

太鼓や笛(調子っぱずれ)、鐘、かけ声などで、
日本の祭りを再現したような曲、というかアクセント。
こんなお遊び的な曲も、彼らならでは。

こういう小曲を、バランスよく配置して、
アルバムにリズムを生み出しているんですね~。

T-8 「どんたく」

爽やかで、どこかとぼけたような加藤のボーカルと対照的に、
ファンキーで、熱い演奏が見事にブレンドされた、
ポップで力強く、個性的な超名曲!!

T-9 「四季頌歌」

オリエンタルで、もの哀しい雰囲気のバラード。

T-10 「塀までひとっとび」

思わず踊りたくなる、ファンキーでご機嫌なナンバー。
ワウのカッティングがいい味出してる。
ここでも高中のソロは、切れまくりだ。

http://www.youtube.com/watch?v=vwfxongUQfk

T-11「颱風歌」

曲の弱さを演奏が補っている好例。中間のインスト部分がかっこいい。

T-12 「さよなら」

アコギによる弾き語りをメインに据えた、静かなナンバー。
一見、加藤のソロっぽくも聞こえ、違和感を覚えるが、
1曲目のイントロに呼応するような、エンディングをつけることで、
コンセプト・アルバムとしての体裁をしっかり保っている。

いやあ、それにしても、インストあり歌ものあり、語りあり、
ボーカルも、加藤だけじゃなく、ミカや小原が歌ったり、
ロックやフュージョン、ファンク、フォークにプログレ…

硬派な曲があれば、軽やかな曲があったり、
1分にも満たない小曲があったり、組曲風のつなぎがあったり…
熱すぎず、冷めすぎず…

実にバラエティに富んでいて、
なおかつトータル・コンセプトアルバムとして、まとまっているという。
その絶妙なバランス感覚。

それにしても、ソロイストとしての高中はとても刺激的だし、
小原の日本人離れした強烈なグルーヴ、表現力豊かなベースは、
曲を数倍、魅力的なものにしている。
それに高橋幸宏がこんなにロックなドラマーだとは。

とにかくかっこよくて、ファンキーで、
そして何より "粋" という言葉がぴったりなアルバムだ。


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人生の最期に聴きたいアルバム [音楽の聴き方]

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『Unplugged』Eric Clapton(1992年)

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人生の最期に聴きたいアルバムを挙げろと言われれば、
迷わずこのアルバムを挙げるだろう。

なぜって言われても困るけど…
このアルバムを聴いていると、とても穏やかな気持ちになって、
もう思い残すことはない、というような気分になる。

多分このアルバムに満ちあふれた優しさが、
すべてを肯定し、受け入れてくれるからだろう。

演奏は決してベストとは思わないが、
息子の死を乗り越えた、クラプトンの歌とギターには、
本物のブルースを感じる。

 

★Today's Set
1.Tears In Heaven(Eric Clapton)
2.Lonely Stranger(〃)
3.Running On Fait(〃)
4.Old Love(〃)


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魅惑のコーラス ~サイモン&ガーファンクル編~ [音楽の聴き方]

親しみやすいメロディと、洗練されたハーモニーが魅力の
サイモン&ガーファンクル
おそらく世界でもっとも有名なデュオ、と言ってもいいんじゃないだろうか。

改めて聴いても、う~ん、名曲ばかり。
「明日に架ける橋」なんか、300年後も残る曲だろう。

デビューアルバムに収録された「Wednesday Morning, 3am」は
二人の声が左右のチャンネルに振り分けられていて、
その美しいハーモニーがしっかり堪能できる。

右チャンネルのハーモニーをじっくり味わって欲しい。
主旋律が同じメロティを繰り返すのに対して、
ハーモニーは前半(下)と後半(上)で別の動きをしたり、

フォーク調で展開も少ない、実にシンプルな曲にも関わらず、
クラシックの対位法を思わせる、エレガントなハーモニーが、
曲を鮮やかに彩っているのが分かるだろう。

とくに歌いだしすぐのところで、ハーモニーが下がっていくところなんか、
ゾクッと来ます!

そばに眠る恋人に未練を抱きながらも、
犯罪を犯したことを後悔し、
彼女のもとを去らねばならないと決心する青年の心理が、
美しいメロディに乗って、切なく響く。

Wednesday Morning, 3am(Simon & Garfunkel)

 


最初の頃は、能天気なサビのメロディがあまり好きじゃなかったこの曲。
いいなあと思ったのは、映画『卒業』で使われた、
ラフで、ロックっぽいバージョンを聴いてから。

で、改めてオリジナルバージョンを聴いて、そのかっこよさに気づいた。
イントロのギターとかスリリングだし、珍しくチョーキングなんかもやってる。

そこへ入ってくるコーラスが、CSNみたいでかっこいい!
って、年代的にはこっちの方が先なんだけどね。

Mrs. Robinson(Simon & Garfunkel)

 

好きな曲はホント多いんだけど、一番好きなのは、やっぱこれかな。

何といっても曲が最高!泣ける。
主旋律はもちろん、アート・ガーファンクルのハーモニーがいい。
1コーラス目の、Aメロの途中から入ってくると、後はずっとハモリ通し。

この映像は最近のもので、
歌い回しなどオリジナルと結構変わってたりするし、
何より、二人がすっかり老けてしまったけど、
これはこれで、ジーンとくるものがあります。

歌い終わったあとに、お互いの背中を叩いて讃え合う姿が感動的だ。

The Boxer(Simon & Garfunkel)

 

おまけ。ボブ・ディランのカヴァーする「The Boxer」
だみ声ときれいな声を使い分け、一人でハモってます!

The Boxer(Bob Dylan)  


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「A BIRD」大橋トリオ [音楽の聴き方]

たまたまテレビをつけたら、かかっていたこの曲。
声とサウンドがとてもよかったので、思わず聴き入ってしまったんですが、
これいいっす!

単なる雰囲気ものではなく、しっかりしたメロディがあるし、
サビの後半でファルセットになるところや、
Cメロのあとのサビで転調するところなどにセンスを感じます。

サイケでシュールなPVも独特の世界があって好き。

A BIRD

 

この曲もいいですねぇ。サビへの展開がいい。
PVも凝っていて、まるで短編映画を見てるようです。

Happy Trail MUSIC VIDEOS

 

この人の声はナチュラルに響いてきて、嫌らしさがないのがいい。
つい聴き入ってしまいますね。

DEAREST MAN MUSIC VIDEOS (FULL)

 

映画音楽を手がけてたというから、
音楽的な知識は半端じゃないんだろうけど、
それをひけらかすような、嫌らしさだとか、
押しつけがましさみたいなものが、
サウンドや声からは感じられないのが、好感持てます。


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魅惑のコーラス ~ビートルズ編(2)~ [音楽の聴き方]

ジョンポールの最強コンビに、さらにジョージが加わって、
多彩なコーラス・ワークを聴かせてくれるのがビートルズだ。
あまり目立たないけど、実は一番難しいパートを歌っているのが、
ジョージだったりする。

まずは3声コーラスのお手本のようなこの曲。
8分の6拍子のオーソドックスなバラードで、
カヴァーかと思いきや、意外にもジョンのオリジナルである。

「This Boy」The Beatles

 

そして3人集まれば一度はやってみたくなるのが、このコーラスだ。

「Nowhere Man」The Beatles

3人のコーラスから始まる始まりや、
ポールの小気味よく、メロディアスに踊るベース、間奏のギターソロなど、
おいしいところがいっぱいで、曲の完成度も高い。

中期以降、だんだん複雑なハーモニーが登場してくる。

「Paperback Writer」The Beatles

多重録音で、何重にも重なったこのコーラス。
初めて聴いたときは、何じゃこりゃ!と思った。
メロディーは「い~しや~き~も」に聴こえるし…

それぞれ独立したパートとして分断された、
アカペラによるコーラス・パートと、楽器が入ってからのバンド・パートが、
交互に展開されるという、普通じゃない構成。

しかしそのおかげで、半端なくかっこいいバンド・パートの入りが、
何度も聴けるのは嬉しい。

いつになくタイトで2枚目なドラムと、歪んだギターのリフが生む疾走感。
ビートルズの中でも、最もドライブ感のある曲ではないだろうか。

しかし何といっても凄いのは、ポールのベースだ。
シンプルなコードの中を、でかい音でうねりまくっている。
これが、とてつもなくかっこいい!

2コーラス目からの、サイケデリックな裏声コーラスもいい。

 

「Drive My Car」The Beatles

このコーラスも尋常じゃない。
強烈なテンションによる、強引ともいえるハーモニー。

要は不安定な音をぶつけるハーモニーだ。
だから音程がとりづらい。
(昔なんでこの歌が歌いづらいのか不思議でした…)

こういう不安定なメロディは、強気に攻めないとダメで、
その点ポールのボーカルは、素晴らしい。

しっかり気合いが入っており、まったくブレがない。
それにもちろん、ただ音程をキープしているだけでなく、
プラスアルファの表現を加えているのだから。

美しいハーモニーというのとは違うが、
決まれば、何ともいえない快感に浸れるコーラスだろう。
こういうテンション系のハモリは大好き!

それにしても、イントロもトリッキーで、入り所がつかみづらい。
なんて曲なんだ。

こんなに人を寄せ付けない要素を盛り込んでおきながら、
それでも全体として、ポップなイメージに仕上げてしまうところが、
ビートルズの凄さだ。

最後はラスト・アルバム『Let It Be』に収められた、アーシーな曲。

「I've Got A Feeling」The Beatles

ポールのぶち切れんばかりのシャウトも魅力だが、
後半、Aメロと同じコード進行に、ジョンがまったく別のメロディをつける部分が秀逸。

熱くブルージィなポールに対し、
クールでシニカルな、ジョンのカウンターメロディ。

別々のメロディは、その後の別々の道を暗示させるが、
二人のメロディが交叉する瞬間は、
マジックの健在ぶりを感じさせずにはおかない。

まだまだ取り上げたい曲は、いっぱいある(っていうかほとんどだ!)けど、
キリがないので、ここら辺で…


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魅惑のコーラス ~ビートルズ編(1)~ [音楽の聴き方]

コーラスの楽しさを教えてくれたのは、ビートルズだった。

ジョン・レノンポール・マッカートニーという、
単独でもそれぞれ強力なボーカリストである二人のハーモニーは、
まさに史上最強、天下無敵といっていい。

二人の息のあったハモリを聴くと、
そこに確かな絆が感じられて、なんとなく嬉しくなる。

「If I Fell」The Beatles

『A Hard Day's Night』に収録の「If I Fell」は、
どちらが主旋律とも言えないような、美しいメロディーを持った曲。
サビのD9への展開なんか鳥肌ものだ。
強引な展開のイントロ(バース?)からジョンのセンスが爆発。


「Don't Let Me Down」

ハモリというのは、相手に合わせることが大事で、
自分の感情は抑え気味になるものだが、このむき出しの感情はどうだろう。
二人のエモーショナルなシャウトによるハモリが胸を打つ。
『Let It Be... Naked』収録バージョンでは、
ジョージを加えた3声のハモリが聴ける。

 

「I Don't Want To Spoil The Party」The Beatles

『Beatles For Sale』に収録のカントリー風の佳曲。

この曲は、Aメロはジョンが一人でハーモニーをつけていて、
サビは高音の主旋律をポール、下のハーモニーをジョン。
…といわれているが、果たしてそうだろうか?

Aメロ部分、僕は下でハーモニーをつけているのは、
ポールじゃないかと思う。

この低音部、確かに僕も最初はジョンだと思っていたが、
それにしてはジョン特有の張りが、あまり感じられないし、
リズムのノリに微妙なずれがあるような気もする。

それにポールはジョンに似せて歌うのが得意だ。
サビにしたって初めて聴く人にとっては、
一瞬同じ人が歌っていると思うんじゃないだろうか。

"If she turns up while I'm gone please let me know"の
while I'm gone のあたり、一瞬ポールの地が出ている気がするのだが、どうだろうか。

また、情報源がどこかは知らないが、
大元の情報が間違っている、という場合だってなくはないし、
本人たちの証言でさえ、実は勘違いというケースもある。

だから、最終的には自分の耳で判断するしかないのだが、
いかんせん、張りの弱い低音部だけに分かりづらい。

それに、おそらくミックスの段階で、
Aメロ~サビへのスムーズなつながりを意図して、
同じような声質になるよう加工しているのだろう。
ぼやけた感じがするのは、そのせいかもしれない。

少し考え方を変えてみれば、
じゃあ逆に、ジョンの一人ハーモニーでなきゃならない必然性はあるのか?

バンドでありながら、ソロ的な作品が多くなる後期になってくると、
作者がひとりでハーモニーをつける、というケースは確かに出てくる。

初期でもポール、あるいはジョンの一人ハーモニーとされる曲はあるが、
僕はそれも疑わしいと思っている。

仮にポールの「Things We Said Today」が、
言われるようにポール自身のハモリだったとするなら、
ジョンの作品が質量ともに圧倒する『A Hard Day's Night』の中で、
数少ないポール作品の印象を高める意図と考えられなくもない。

しかしこの「I Don't Want To Spoil The Party」では、
そのような必然性は感じられない。
むしろ二人のハーモニーこそが、最大の聴き所といってもいい曲ではないだろうか。

サビは二人でハモっているのだから、
Aメロだけ、ジョンが一人でハモるというのもどうか。

そうやって改めて聴いてみると、ポールに聴こえてきませんか?

真相はともかく、この曲はビートルズのひとつのスタイルを示している。

普通1つの曲では、同じ人が主旋律をずっと歌うと思うのだが、
彼らの場合、特にジョンのメイン・ボーカルの曲で、
サビなど高音の部分になると、ポールがメインをとることがある。
この曲や「A Hard Day's Night」などがそうだ。

僕の言うように、この曲のAメロの低音部がポールなら、
Aメロとサビで、まさに主旋律とハーモニーが入れ替わる「ねじれの構図」となる。
このねじれる瞬間の何とスリリングなこと!

自分の作った曲が、自分の音域では歌えないと分かったとき、
普通はキーを下げるか、メロディーを変えるんじゃないだろうか。
でもそれでは、曲のイメージが損なわれてしまう。

ところが相方ならその音域を歌える、しかも自分と同じようにかっこよく。
じゃあ相方に歌ってもらおう、というのはとても合理的だが、
思ってもなかなかできないことだ。
一見禁じ手にも思える、この方法を強みに変えてしまったのがビートルズである。

つまり、自分で歌いたいというエゴを捨てることで、
思い描いた最良のイメージで、曲を具体化できるようになったのだ。

なんと柔軟な姿勢。それはまた、パートナーを信頼しているからこそ
できることではないだろうか。


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「吟遊詩人」GARO [音楽の聴き方]

garo_anthology.jpg

<曲名>「吟遊詩人」
<収録アルバム>『アンソロジー 1971-1977』GARO(2002年)
<作詞作曲> 阿久悠/日高富明、堀内護
<編曲> 松任谷正隆

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アコギの鳴り方がまさにCSN!

GAROの全シングル、AB面の曲を収めた『アンソロジー 1971-1977』の中で、
ひときわ異質な存在感を放つのが、この「吟遊詩人」だ。

一般的なGAROのイメージを決定づけた「学生街の喫茶店」を筆頭に、
ヒットを意識したような曲がならぶ中、
これこそ、和製CSN&YといわれたGAROの、面目躍如といえる曲である。

ツインギターのハモリによる、ドラマティックなイントロが期待感を煽る。
3声のハモリや、組曲形式のスタイルなど、まさにCSN&Y。
第2部のコーラスなどは、「デジャ・ヴ」を彷彿させる。

しかし何より僕がCSN&Yっぽいと感じるのは、
アコギの鳴り方だったりする。

それは単に同じギターや弦、ピックを使ったり、
同じチューニングにしたからといって出せるような音じゃない。

ピックを当てる角度や、力の入れ具合など、
おそらく弾き方を相当研究したに違いない。

かまやつひろしが「本家よりうまい」と言ったそうだが、
単なるリップサービスとは思えない。

■ベースは誰?

にしても、こんなマニアックな曲をシングルで出すなんて!
そこにはアーチストとしての、彼らの自信やプライド、
意地といったものが感じられます。

このシングルバージョンは、いろいろ詰め込まれている割に、
4分04秒と聴きやすいサイズになっているが、
実は後半部分がカットされたショートバージョンだ。
フルバージョンは、アルバム『吟遊詩人』に入っている、7分以上にも及ぶ大作。

僕はどうしても、このフルバージョンが聴きたくて、
現在廃盤の『吟遊詩人』を、ネットの中古CDショップで買ったのですが…
正直、後半のパートはなくてもいいと感じました。
ちょっと期待しすぎだったかもしれません。

それでも、このシングルバージョンは素晴らしい!
音もアルバムバージョンより、少し大きめだ。

ところでこの曲、第1部の2コーラス目から入ってくるベースが、とてもかっこいい。
アルバム『吟遊詩人』のクレジットによると、
曲毎のクレジットはないが、ベーシストとして
細野晴臣寺尾次郎(シュガーベイブ)が参加している。
この粘っこいグルーヴは、なんとなく細野っぽい気がするが、
果たしてどうなんでしょう?


タグ:GARO 邦楽
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「キャラヴァン」アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ [音楽の聴き方]

caravan.jpg

<原題> 「Caravan」
<収録アルバム> 『Caravan』Art Brakey & The Jazz Messengers(1962)
<作曲> Ellington/Tizol

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デューク・エリントンのオリジナルだが、
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ「キャラバン」は、
フロントに、フレディ・ハバード(tp)、カーティス・フラー(tb)、
ウェイン・ショーター(ts)という、なんとも贅沢な布陣を揃え、
最高にクールなアレンジで聴かせる。

いや〜、とにかくかっこいい!!
陳腐な表現で恐縮だが、もうそれ以外に言いようがない。

リーダー、アート・ブレイキーのエネルギッシュなドラムに象徴される熱気と、
音楽監督を務める、若きウェイン・ショーターのクールな知性が混ざり合い、
独特のスタイリッシュな世界を描き出している。

エキゾチックと形容されるメロディーだが、
このアレンジに関しては、もう少し洗練された感じで、
ヨーロッパ的な香りも漂う。
だが根底にあるのは大陸の熱い風だ。

いきなり、リーダーのドラムソロ!
アルバムのオープニングを飾る曲でもあるだけに、
誰がボスなのか、初めにきっちり教えといてやるぜ、
ってことなのかどうか分からないけど…

続いて入ってくるピアノが、とてもスリリング。
弾いてるのは、村上春樹もお気に入りのシダー・ウォルトン

そのトリッキーな入り方に撹乱され、リズムを見失っているところへ、
不意打ちのごとく入ってくる、3管のメロディーがたまらない。

それから、Bメロ(というのだろうか?)の最後で、
縛っていた紐が切れて、一気に散らばっていくようなベースが、これまたいい。

それぞれのソロも素晴らしい。
しかしなんと言っても、ボスのドラミングに尽きるだろう。

62年の作品とは思えないほど、
いま聴いても、まったく古さを感じさせない。


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歌詞なんていらない!(2) [音楽の聴き方]

残念ながらシカゴ「Happy 'Cause I'm Coming Home」は、
音源が見つかりませんでしたが、代わりにいくつか…

デヴィッド・クロスビーの、『If I Could Only Remember My Name....』から、
盟友グレアム・ナッシュとデュエットした、
その名も「Song With No Words (Tree With No Leaves)」

このアルバムには、スキャットの曲がけっこう入ってるけど、どれもいい。

「Song With No Words (Tree With No Leaves)~Teach Your Children」
(David Crosby & Graham Nash)

 

続いてピンク・フロイド『狂気』から。邦題は「虚空のスキャット」
時空を超えた壮大なスケールを感じさせる、女性ボーカル。

「The Great Gig In The Sky」(Pink Floyd)

 

ケイト・ブッシュの一人合唱団(?)による、神秘的な曲。

「Night Scented Stock」Kate Bush

 

ジャズ・ボーカルの最高峰、エラ・フィッツジェラルドによる、
これぞスキャットというスキャット。後半のアカペラ・スキャットが凄い。

「One Note Samba」Ella Fitzgerald

 

たまたま見つけた、ポーランドのジャズ・ボーカリスト。
スキャットで実験的なことをやってるようです。

「Night In Tunisia」Urszula Dudziak


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歌詞なんていらない!(1) [音楽の聴き方]

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<曲名> Happy 'Cause I'm Coming Home
<作曲> Robert Lamm
<収録アルバム>「Chicago III」Chicago(1971)

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■歌詞なんていらない!

…といっても、決して歌詞を軽視しているわけではありません。
ただ音楽にとって、詞はあってもなくてもいいものなんだという、
案外あたり前のことを、ともすると忘れがちなんじゃないかと。

いわゆるポップ・ミュージックの世界では、
当たり前のように付きまとう歌詞ですが、

世の中には詞のない音楽も、たくさんあるわけで、
クラシックやジャズ、民族音楽、映画音楽、BGM…といったジャンルでは
詞のある方が、むしろ少数派でしょう。

逆に音楽のない詞はあるかというと、ない(多分…)。
それはただの「詩」ですよね。
普通はメロディなり、リズムがついて初めて歌になる。

そう考えると、歌詞にとって重要なのは、いかにメロディやリズムに乗せるか、
またそれを説得力を持って表現できるか、ということではないかと思う。

内容はどうでもいいとは言わないけど、内容だけにこだわるんなら、
歌に乗せなくてもいいわけだし、「詩」でいいわけだから。

シカゴ『Chicago III』に収められた、美しいスキャット・ナンバー、
「Happy 'Cause I'm Coming Home」を聴くたびに、そんなことを思う。


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